クエスト1

落第を回避せよ! (目標:10ターン)

召喚師を育成するスムーン学園の生徒、イージは、成績最下位の落ちこぼれ。
このままでは、落第まっしぐらだった。
イージの担任のテアーチは、そんなイージを試すために、落第か否かを決めるテストを行う。
フルンクといういたずら好きの魔物の部屋に校章を放り投げ、それを探し出したら、落第は免れるとのこと。
イージは、あなたのキャラクターを召喚し、一緒に校章を探す手助けを求めてくる。
イージのために、一肌脱いでやってはくれないだろうか?



参加キャラクター

クロハ・クローバー



1-1

 ここは、一人前の召喚師を育成するスムーン学園。
 ここの生徒であるイージは、なかなかどうして落ちこぼれでした。
「おい、イージ! お前、成績超危ないらしいぜ!」
「このままだと落第だとよ! ひゃはははは!」
「やめなさい」
「テアーチ先生」
 イージの担任であるテアーチ先生は、教室でからかわれているイージを連れ出しました。
「イージ。キミは、本当に召喚師になりたいかい?」
「はい、テアーチ先生。僕は、立派な召喚師になりたいです」
「うん、その言葉が聞きたかった。だが、キミの成績は、本当に危うい。そこで、だ……」
 テアーチ先生は、ある扉の前で足を止めました。そして、なんとイージからスムーン学園の校章を奪い、扉の向こうへ投げたのです。
「この扉の向こうで、キミの校章を探してきなさい。探せなければ、キミは落第だ」
「探せたら、落第ではありませんか?」
「ああ。ここは、フルンクの部屋。フルンクはいたずら好きで、人を困らせることが大好きな魔物だ。召喚にも頼り、校章を探しなさい」

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 一人でフルンクの部屋に入ったイージは、早速召喚魔法を使いました。
 出てきたのは、クロハ・クローバー。
「僕の校章を探してほしいんだ。クロハ、力を貸してくれないか?」
 フルンクの部屋は、まるでどこかの庭園のように、色とりどりの草花に囲まれています。そして、ぽよんぽよんとしたフルンクたちが、空中を自由に浮かびながら、くすくす笑っていました。



1-2

 クロハは、イージの手をつかみました。そして、そのままフルンクの部屋をゆっくり歩いていきます。
「一緒に探してくれるんだね。ありがとう!」
 どうやら、イージの頼みを聞いてくれるようです。
 庭園のようなフルンクの部屋。本当に室内なのかも怪しく、上には空が広がっていて、お日様まで出ています。
 とりあえず、二人は、入り口から奥を目指します。もちろん、下に校章が落ちていないか、確認しながら。
「あれ、どうしたの」
 クロハは、急に立ち止まりました。
 イージをつかんでいた手を離すと、その手を前に掲げます。イージも、違和感に気づいたようです。
「あ……、壁なんだ」
 イージも、クロハにならって、目の前に右手をおそるおそるかざしてみます。すると、手には、硬い感触。それと……。
「う……」
 絵の具です。どうやら、絵の具で、この先にも道が広がっているような絵が描いてあるようです。
 イージが困った顔を浮かべると、きゃっきゃっと、小さな子供が笑うような声が聞こえました。フルンクです。
 見ると、フルンクの中には、体に絵の具をつけた者もいます。
「噴水があるから、ちょっと手を洗おうよ」
 今度は、イージがクロハの手を左手で引いて、噴水まで連れていきます。
 イージは、噴水に両手をつけました。
「ううっ?」
 噴水に手を出したイージは、しかめっ面。
 それもそのはず。噴水から出ているのは、何とも言えないぬるま湯だったのです。
 イージがよほど変な顔をしたのでしょうか。見ていたフルンクは、さらに笑っています。
 それでも、手を洗えないほどではないので、イージは手を洗いました。
「テアーチ先生は、まっすぐ校章を投げたはず……。でも、壁まで探したけど、なかったねぇ……」
 イージは、ポケットからハンカチを出すと、手を拭きました。
「違うとこ探してみる? あ、まずは、手を洗う? ハンカチなら、貸すからね」
 イージは、ハンカチをひらひら振り、クロハに知らせます。
 “召喚”とは、別次元から、自分に協力してくれる人・生物を探し、一時的に呼び出す魔法。
 つまり、クロハにとってここは異世界で、イージにとってクロハは異世界の者なのです。
 言葉が通じないため、イージは、なるべくわかりやすいように、噴水を指さしたり、ハンカチを振ったりしています。
 その様子が面白いのか、フルンクは、またぽよんぽよんくすくすくすくす笑っていました。

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1-3

 クロハは、噴水の中に手を突っ込みました。そして、動かします。
 一瞬、イージは、手を洗うにしては不自然だなと疑問に思いましたが、すぐクロハの行動の理由が理解できたようです。
「噴水の中を探すつもりなんだね?」
 イージは、ハンカチをしまうと、靴と靴下を脱ぎ、はだしになりました。また、肩にかけていただけのケープも傍らに置きます。ケープは、校章が留め具になっているのです。
 そうして、腕まくりをすると、噴水に入りました。相変わらず、気持ち悪いくらいのぬるま湯です。
「うーん……」
 イージは噴水の奥の方を、クロハは噴水のふちの方を探しますが、入っているのは石や小枝、葉っぱばかりです。
 二人を、遊んでいるとでも思ったんでしょうか。フルンクは、噴水の水にぷかぷか浮きながら、二人を興味深そうに見ています。
「あいたっ」
 噴水の上から、水に流されたフルンクが降ってきました。ゴムボールみたいなフルンクが、イージの頭にぶつかってぽよんと跳ね、その勢いのまま地面に転がります。思わず声を上げたイージに、フルンクはまたきゃっきゃっと笑います。しかし、地面に転がったフルンクは、ちょっと痛そうな顔をしていました。
「もうー! 絶対キミたちが隠したんでしょー! 意地悪しないで教えてよー!」
 イージは、落ちてきたフルンクに向かって言います。フルンクは、一瞬きょとんとした顔をしましたが、すぐにまたいたずらな表情になりました。そして、イージの周りをぽよぽよ浮かぶのです。
「むうう……」
 イージは、ちょっといらいら。フルンクは、くすくす笑っていますが、これ以上はさすがに怒らせるとわかっているのでしょうか。特にちょっかいを出してはきません。
「どうしよう……。もっと探すとなると、服全部濡れちゃうよ……。でも、探した方がいいかなあ」
 あと噴水で探していないのは、水が湧き出ている中心部だけ。しかし、そこを探すとなると、全身がびしょ濡れになってしまうことは容易に想像できました。

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1-4

 クロハは、噴水を見上げているイージの腕をつつきました。
「なんだい、クロハ」
 クロハは、首を傾げています。何か聞きたいことでもあるようです。
「何か見つけたの?」
 しかし、クロハは、動きません。手は、水の中に入れたせいで濡れていますが、何も持っていません。
 クロハの手についていた絵の具も、すっかり流れ落ちています。
「……ああ」
 イージは、クロハが何を言いたいのか、思いついたようです。ポケットに指を入れました。
「ハンカチだね、はい!」
 そして、笑顔でハンカチを差し出します。クロハは、とりあえず受け取りますが、ちょっと納得がいっていない様子でした。
 クロハは、ハンカチで手を拭きながら、イージを見つめます。
「……噴水もっと探せってことかな」
 イージは、少し落ち込みました。
 それでも、意を決したように、セーターとネクタイを脱ぐと、噴水の奥へ進みます。クロハは、びっくりして、イージに手を伸ばします。引き止めるつもりのようです。
 しかし、すでにイージには届きませんでした。イージは、噴水の水が落ちている場所にも身をかがめて、校章を探し始めます。
 クロハは、おろおろしています。どうやら、イージに、自分の伝えたいことが伝わらなかったようです。そんな様子を見て、フルンクはまたくすくす笑っています。
 イージは、もうびしょ濡れでした。

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1-5

「よい……しょ……」
 イージは、びしょ濡れになってしまったこともあってか、噴水を上ったりと、さらにびしょびしょになりながら校章を探しています。
 一方、クロハは、自分の近くにいたフルンクを見ました。フルンクは、くすくすとイージを見ていましたが、クロハが見ていることに気づくと、クロハに向き直りました。
 クロハは、フルンクに何かを言います。イージが先ほど怒っていたように、校章を隠したのはフルンクでしょう。例えそうでなくとも、フルンクは何か知っているはずです。そのため、フルンクに、校章のことを聞いているに違いありません。
 フルンクも、それがわかったのでしょう。笑い顔がデフォルトのフルンク。クロハの訴えを聞くと、さらに口角をつり上げました。クロハは、またフルンクに何か言いました。
 クロハの前にいたフルンクの隣に、別のフルンクがやってきます。クロハの前のフルンクは、別のフルンクの方を向くと、もにゃもにゃと話しました。何かを伝えているようです。おそらく、クロハが校章の在り処を尋ねてきていることを話しているのでしょう。
 話し終えた二体のフルンクは、クロハを見ました。その次に、フルンク同士で顔を見合わせると、いたずらっ子のようにくすくす笑い合いました。
 様子を見る限り、フルンクたちは、やはり校章の在り処を知っているのかもしれません。
 しかし、フルンクが何かしら行動を起こしてくれるのを待っていても、フルンクは、その場でくすくす笑うばかり。どうやら、教える気はないようです。

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1-6

 クロハは、自分の前にいる二体のフルンクたちを手招きすると、噴水を離れました。フルンクは、顔を見合わせ、きょとんとしていましたが、クロハについていくことにしました。
 クロハが向かったのは、噴水が見えなくなる、木の向こう。フルンクは、不思議そうにクロハを見つめます。
 そして、クロハは、特技を発動しました。クロハの発動した特技は、変幻自在 《ファンタズム》。ものの見た目を別のものに変化させる特技です。
 クロハが特技を発動し終えると、二体のフルンクは目を丸くした後、きゃっきゃっと笑いました。
 クロハは、自分に特技を発動し、なんと自分をフルンクに変化させたのです。
 フルンクは、興味深そうに、フルンクとなったクロハを見ています。くるくるぽよぽよ、フルンククロハをじっくり観察しています。
 フルンクは、またきゃっきゃっと笑いました。今までは、人の失敗や困っている様子を見て喜んでいるようでしたが、今回は、ただ単にご機嫌な様子です。仲間が増えたみたいで、嬉しいのかもしれません。
「う~ん、噴水にはないみたい……」
 噴水の方から、声が聞こえてきました。イージです。
 二体のフルンクとクロハ……もとい、三体のフルンクは、木のかげから、そっと様子を窺いました。
「びしょびしょだよぉ……」
 イージは、その発言の通り、頭のてっぺんから足の先までびしょびしょの姿で、噴水から出ました。
 と、その時、噴水の近くにいたフルンクたちが、いそいそとイージに布をかぶせ、ごしごし拭き始めました。
「拭いてくれるの? ありがとう……。キミたちって意外と優しいんだね……」
 素直にフルンクに拭かれているイージでしたが、突然はっとします。
「って、これ僕の服じゃない!」
 フルンクは、イージが先ほど脱いでいたセーターやケープ、ネクタイ、さらには靴下までをも使って、イージを拭いたのです。
 イージがそのことに気づくと、フルンクは、きゃっきゃっと嬉しそうに逃げ始めました。
「こらーっ!」
 フルンクを追いかけるイージ。かげからその様子を見ていた三体は、くすくすと笑い合いました。

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1-7

 フルンクだったクロハの姿が、元に戻りました。フルンクはびっくりしましたが、またすぐいつもの表情に戻ります。
 クロハは、改めてフルンクに何かを言います。
 クロハの求めることがわかったのでしょうか。一体のフルンクが、どこかに飛んでいきました。もう一体のフルンクはその場に留まり、じろじろ興味深そうにクロハを見ています。クロハがフルンクになったことが、不思議のようです。
「見つけた!」
 イージは、フルンクと、かくれんぼとおいかけっこをしています。おそらく、イージにはそのつもりがないのでしょうが、フルンクに遊ばれています。
 クロハは、イージとフルンクの声を聞きながら、先ほどどこかへ行ってしまったフルンクを待ちました。
 フルンクが戻ってきました。もう一体のフルンクに何かを見せ、頷くように体を傾け合うと、クロハに向き直ります。
 フルンクは、緑色した宝石のようなものを持っていました。
 フルンクが、それをクロハに差し出します。クロハも、受け取りました。
 二体のフルンクは、いつもの表情でしたが、どこか満足げな様子でクロハを見ていました。
「あれ? クロハは?」
 フルンクを追いかけていたイージが、ふと気づいたように立ち止まって、噴水の辺りできょろきょろしています。
 二体のフルンクは、イージの前に現れると、その周囲をぽよぽよ飛びます。
 イージは、もはやフルンクを気にせず、姿の見えないクロハを捜していました。

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1-8

 クロハは、イージのもとへ向かいました。イージは、クロハの姿を見ると、ほっとした様子で駆け寄ります。
「よかった! どこ行ったのかと思っていたよ」
 クロハは、イージの湿ったシャツをくいくいと引っ張りました。そして、逆の手を上げます。その手は、上を指し示していました。
「……あ」
 クロハの手の動きに合わせて、顔を上げたイージ。その目が、丸く見開かれました。
 イージの視線の先は、クロハの手。その手にあったものに釘づけになっています。
「あーっ! 僕の校章!」
 突然のイージの大声に、クロハはびくっとします。
 クロハの手にあったのは、先ほどフルンクからもらった、緑色の宝石のようなもの。そう。実はこれこそが、スムーン学園の校章なのです。
 イージは、びっくりしているクロハを気遣う余裕すらなく、校章が見つかったことを喜んでいます。
「ありがとーっ、クロハ! 見つけてくれたんだね! わぁー、どこにあったんだろっ」
 イージは、興奮しています。周りのフルンクは、みんなにやにやと笑っていました。
 しかし、クロハは、言葉が通じていないため、イージが何に興奮しているのか、よくわかっていません。イージも、それは察しているのか、無理に校章を奪おうとはしません。
「えっと……。それ、探していたんだ。くれないかな?」
 イージは、校章を指さした後、戸惑うクロハに手を差し出しました。

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1-9

 クロハは、持っていた校章を……、イージの頭の上に乗せました。
「うわ、……っと」
 校章は、イージの頭を転がり、落ちましたが、イージはそれをキャッチします。
「ありがとう、クロハ!」
 クロハも、周りにいるフルンクも笑っていました。
「じゃあ、早速部屋を出よう!」
 イージは、クロハの手を取って、そそくさとフルンクの部屋の扉を開けます。
 そこには、テアーチ先生がいました。テアーチ先生は、イージの姿を見ると、目を見開きました。
「テアーチ先生! 校章を見つけました!」
「イージ……、それは……」
「クロハです。召喚したら、クロハが来てくれて、校章もクロハが見つけてくれたんです」
「そうか。クロハ、ありがとう」
 テアーチ先生は、優しい笑顔でクロハにお礼を言いますが、またすぐイージに向き直ります。
「服がびしょ濡れじゃないか、イージ。それに、フルンクの部屋に入る前に身につけていた他の服はどうした」
「あ……」
 扉から、ぽよぽよ、何かが出てきました。フルンクです。イージが脱いだ服も持っています。しかし、フルンクに拭かれたり、地面に置いたりしていたせいでしょうか。服は、汚くなっていました。
 テアーチ先生は、無言でフルンクが持つ服を見つめます。イージは、かわいた笑顔で視線を逸らします。フルンクは、相変わらずくすくす笑っていました。クロハは、そんなみんなを眺めていました。
 やがて、テアーチ先生は、ふっと笑いました。
「とにもかくにも、フルンクの部屋で、こうして校章を見つけ出すことができたんだ。落第の話は、なかったことになる」
「ありがとうございます!」
「もういいから、クロハにもお礼を言って、クロハをもとの世界に帰してから、お風呂に入りなさい。風邪を引く。フルンクが持っている分の服は、私が運んでおくから」
 召喚師が使える魔法は、異世界から自分に協力してくれる者を呼び出す魔法と、そうして呼び出した者をもとの世界に戻す魔法の二種類です。その者にはその者の世界での生活があるのですから、あまり長い時間この世界に留めておくことは禁止されています。
 イージは、クロハに向き直りました。フルンクも、イージの後ろからクロハを見ています。
「本当にありがとう、クロハ! キミのおかげで、とっても助かったよ!」
 イージが笑うと、フルンクもにこにこ笑います。
 言葉は通じませんが、イージたちが喜んでいることが伝わったのでしょうか。クロハも、満足そうに軽く頷きました。

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END



結果

クエストは成功!
クロハの活躍のおかげで、イージは、スムーン学園落第を免れることができました。

  • 最終更新:2017-05-04 07:10:27

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