クエスト3

薪を集めよ! (目標:8ターン)

実力テストが終わると、次に待ち受けるのは、野外実習だ。
生徒たちが普段からちゃんと体を鍛えているか、また勉強をしているか、教師らは、この実習で改めて把握する。
野外実習の舞台は、スムーン学園のある町、トゥーヌから少し歩いた草原と、その傍らにある森だ。
まずは、火を起こすための薪集めだが、イージ一人では頼りない。力を貸してくれないか?



参加キャラクター

クロハ・クローバー



3-1

 ここは、スムーン学園のある町、トゥーヌから少し歩いた場所にある草原。
 スムーン学園のテアーチ先生が担当するクラスは、本日野外実習として、この草原に来ていました。
「キミたちは、魔物に対抗する手段を学びに、学園に通っているね」
 テアーチ先生が話し出しました。
 この世界は、魔物と人が暮らす世界。人は、一歩町の外に出ると、凶暴な魔物に襲われることがあります。
 そのため、学校で、魔物に対抗する手段を学びます。手段には様々な方法がありますが、スムーン学園で学べる召喚魔法も、その手段の一つ。
「卒業したら、こうして町の外を出歩くことも普通にある。時には、その日の間に町まで辿り着けないことだってあるだろう。今日の野外実習では、そういう時行き倒れにならないように、勉強してきたことを活かして、頑張ってみてほしい」
 テアーチ先生の教え子の一人、イージは、心配をしていました。
 野外実習は初めてではありませんが、ケガをしたり、落とし物をしたり、制服を破いたり、ろくな目に遭ったことがないからです。
「では、火を起こすための薪を拾って、ここに運んできてほしい」
 すぐ近くには、森があります。そこで薪を集め、テアーチ先生のいるこの場所まで持ってくる。それが、実習内容のようです。ある程度の薪を集められたら、テアーチ先生から許可が出て、自由時間になるそうです。
「ここは、町ではない。襲いかかってくる魔物とも遭遇するかもしれない。召喚するなら、召喚した者と離れないように。また、本当に危ない時は、校章を使って、身を守ること」
 校章は、学生ということを証明するほか、緊急の時に小さなバリアを張り、その学校の先生を呼ぶこともできます。
「では、無茶だけはしないようにね」
 そして、薪集めが始まりました。
 クラスメートたちは、一目散に森へ走ったり、早速召喚魔法を唱えたりしています。
 イージは、一目散に森へ走る側でしたが、みんなと比べて足が遅いので、若干出遅れた感じです。
 森に入ると、イージは、目に入ったいくつか木の枝を拾いました。しかし、どれほど薪を集めて持っていけば許可が下りるのかはわかりませんが、少なくはないでしょう。一人で集めていては、時間がかかりそうです。

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 イージは、召喚魔法を唱えました。
 現れたのは、クロハ・クローバー。
「あっ、クロハ、また来てくれたんだ、ありがとう!」
 スムーン学園で校章を探す時や実力テストの時にも協力してくれたクロハ。イージは、笑顔でクロハを迎えました。
「今回は、スムーン学園じゃないんだ。だから、なるべく一緒に行動しようね」
 召喚する者とされる者の間、言葉は通じません。それでも、イージは、表情で伝えられればと、力強く言いました。
「薪を集めたいんだ。協力してくれるかい、クロハ」
 イージは、近くに落ちている木の枝を指し示し、すでに持っている枝をクロハに見せました。



3-2

 クロハは、周囲をきょろきょろと見回しています。薪を探すにしては、上の方まで見ているのが少し気になります。
「じゃあ、僕も薪をもっと集めるから、クロハもよろしくね」
 しかし、クロハにはクロハの考えがあると思ったのでしょうか。イージは、疑問を口にせず、薪拾いを再開しました。
 周囲は、森らしく、木、草、そして花。植物ばかりです。
 それでも、クロハは、周囲を見回します。すると、少し奥の方で、イージと同じ格好をした男の子の後ろ姿を発見しました。
 クロハは、その男の子のもとへ向かい、男の子のケープを軽く引っ張りました。男の子が、クロハに振り向きます。
「お前は……、どっかで見た顔だな。うちのクラスの誰かに召喚されたやつか」
 クロハは、向こうでせっせと薪を集めているイージを示します。そして、男の子を強く引っ張りました。しかし、男の子は、びくともしません。
「なんだよ、イージを助けろって言いたいのか? イージを助けるのは、俺じゃなくてお前だろ」
 男の子の言う通り、クロハは、助けを求めたのでしょうか。しかし、男の子は、全く取り合う気がないようです。
 クロハは、男の子をじっと見つめました。男の子は、観念したのでしょうか。ため息を一つつくと、前方上を指さしました。木に登り、刃物で枝を切り落としている者がいます。おそらく、この男の子が召喚した者でしょう。
「薪ってのは木からできているわけだし、わざわざ歩き回って拾い集めなくても、木をどうにかすれば早く片づくと思うぜ」
 男の子は、腕組みをして、枝を切っている自分の召喚した者を見つめていました。

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3-3

 クロハは、切り落とされた枝がぼとぼとと落ちてくるその木に近づきました。
「あ、おい。近づくと危ないぜ」
 男の子が、クロハを止めます。クロハは、木を見上げて、そこで作業している者に何かを言いました。
 しかし、やはり異世界の者同士だからでしょうか。まるで言葉は通じないようです。男の子も、男の子に召喚されたであろう者もきょとんとしています。
「あれ? クロハー? どこー? 僕、もう結構集められたから、一回置きに行きたいんだけどー……」
 向こうから、イージの声が聞こえてきます。男の子は、クロハを、イージがいる方に軽く押しました。
「ほら、イージが呼んでるぜ。あんまり、召喚主から離れるなよ。……ああ、思い出した。お前、この前のイージの実力テストの時も、イージに召喚されたやつだったな。なら、いい機会だから教えとくよ」
 男の子は、クロハに向き直ると、改めて口を開きました。
「基本、召喚主以外、お前のことを元の世界に戻せない。だから、もしお前が危ない目に遭った時、イージから離れていたら、この世界で死んじまうことだってありえるんだ。前の実力テストの迷路も、二手に分かれるなんて本当は言語道断なんだよ。イージはバカで物覚え悪いから、基礎もよく理解してないんだよな……」
 クロハは、男の子の後ろの、作業を再開し、刃物で薪を落としている者を見ていました。
 視線は外れているわけですが、男の子は怒りはせず、ふっと笑いました。
「言葉は通じなくても、理解はできると思ってるぜ。さ、イージのもとに行けよ」
 木々の間から見えるイージは、確かに、それなりの薪を集めたようでした。

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3-4

 クロハは、イージのもとに帰っていきました。
「あ、クロハ……って、薪は?」
 クロハは、何も持っていません。
「通じなかったかな……」
 イージの抱えていた枝が二、三本落ちました。よく見れば、そういう枝が、イージの足元に何本か散乱しています。
 イージは、抱えていたそれを地面に置くと、一つ息を吐いて、半分ほど持ち上げました。
「じゃあ、半分持ってくれないかな?」
 イージは、持ち上げた半分を、クロハに差し出しました。クロハは、それを受け取ります。
 しかし、薪を持った瞬間、クロハは、体ごと崩れ落ちるようにして、薪を落としてしまいました。
「わあっ、大丈夫、クロハ!」
 イージが、クロハの体を支え、起こします。
「もしかして、重いのかな……」
 イージにとっては、さっきまで抱えていた半分の量ですし、別に重くはありません。一方、クロハは、普段こことは異なる世界で生きています。この世界に慣れていないクロハでは重いということも、十分ありえるでしょう。
 クロハは、足元の枝を一本拾いました。それだけで、少し重そうです。
「じゃあ、あとは僕が持ってくね。ついてきてね」
 イージは、集めた枝を拾い直し、改めてテアーチ先生のもとへ運びます。
 テアーチ先生のもとには、もうすでにたくさん薪が集まっているようでした。
「テアーチ先生、薪を集めてきました」
「イージ、ほとんど落としているようだよ」
 振り向けば、まるで道しるべのように枝が落ちていました。その枝を拾っているクラスメートもいます。もちろん、イージの手元には、数本しか残っていません。
 イージは、軽く絶望したような表情を浮かべました。テアーチ先生は、クロハにお礼を言って一本の枝を受け取り、薪が集めてある場所に投げました。

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3-5

 クロハは、きょろきょろと辺りを見回し始めました。イージは、とりあえず手元に残っていた薪だけ、テアーチ先生に渡します。
「どうしようか、クロハ……」
 イージは、落ち込んだ様子でクロハに振り向きます。
 クロハは、何かを探しているようでした。薪を探すにしては、少し不自然です。
 そんなクロハが、テアーチ先生の傍らにあるものに気づきました。生徒たちのかばんです。イージたちが着ている制服のように、同じデザインのかばんが、乱雑に置かれています。
「かばんに何かあるのかい?」
 じーっとかばんを見ているクロハに、イージは話しかけました。
「僕のかばんには、僕が運ぶの担当になっている食料と、あと、水筒と、傷薬と包帯が入ってるけど……。薪集めには使えないよね」
 似たようなかばんばかりなので、どれがイージのものかはわかりません。もし、イージのかばんが必要なら、イージに頼まないといけないでしょう。
 二人でかばんを見ていると、テアーチ先生が口を開きました。
「さあ、イージたちも早く薪を集めないと。自由時間がなくなってしまうよ」
「はい、テアーチ先生」
 イージは、半ば諦めた様子で返事をしました。テアーチ先生の言葉は、今のイージにとって残酷のようです。
 ちなみに、イージが落とした薪は、全て別のクラスメートが拾って、自分のものとしてしまいました。テアーチ先生は見ていたはずですが、咎めるそぶりはないようです。

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3-6

 クロハは、テアーチ先生を一瞥すると、イージの手を引きました。
「どうしたの?」
 テアーチ先生の後ろにある、集めた薪が置いてある場所。クロハは、そこの裏に回りました。
 そして、周囲を確認すると、特技を発動しました。
「わあっ、クロハ……! それがキミの特技なのかい?」
 クロハの特技は、変幻自在 《ファンタズム》。ものの見た目を別のものに変化させる特技であり、それを発動させたクロハは、一本の大きな丸太へと姿を変えました。
「これをテアーチ先生に見せれば……!」
 イージは喜びましたが、ふと表情を曇らせました。
「もしこの薪が、切られたり焼かれたりしたら、クロハはどうなるんだろう……」
「イージ、呼んだかい」
「テアーチ先生」
 テアーチ先生が、イージと、丸太になったクロハの前に現れました。テアーチ先生は、驚き、目を丸くしています。
「どうしたんだ、その丸太は」
「あ、えっと……、クロハが用意してくれたんです」
「すごいじゃないか、これだけのものを用意できたら十分だよ。では、イージも自由時間だ」
「ありがとうございます……」
「それは、重ければ、その辺りに置いておけばいいからね」
 テアーチ先生は、感心しながら、立っていた元の場所に戻っていきました。
 先ほどまで、自分には自由時間なんてないと思っていたイージ。しかし、クロハが丸太になってくれたおかげで、薪集めをあっさりクリアしました。嬉しいですが、若干拍子抜けもしてしまいます。
「というか、クロハ、ありがとうだけど、どうしよう~……!」
 今さらテアーチ先生に、この丸太がクロハということは言えません。また、イージがクロハを元の世界に帰す魔法を使えば、クロハは無事でしょうが、そうすると、丸太も消えてしまうでしょう。
 イージは、うろうろと、丸太のクロハのそばを歩いて、途方に暮れています。
 結局、この後クロハの変幻自在 《ファンタズム》の効果は切れ、クロハは元の姿に戻り、代わりに丸太がなくなってしまうのですが、テアーチ先生は一度許可を下したため、薪集めは合格のまま変わりありませんでした。しかし、それまでイージは、ひたすらうろうろしながら悩んでいたのでした。

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END



結果

クエストは成功!
クロハの活躍のおかげで、イージは、薪集めは合格することができました。

  • 最終更新:2017-08-29 13:31:03

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