クエスト4

遊びを堪能せよ! (目標:?ターン)

ある日、イージが職員室にいると、テソット先生に誘われ、ベヨンゼドオルと呼ばれる遊びをすることになる。
ベヨンゼドオルとは、ひたすら前方にある扉を通り、ゴールを目指す娯楽用の迷路だ。
参加するのは、イージと、そのクラスメートのレアデー、コオリ、チェーキュ。
せっかくなら一位を目指したいものだが、イージだけでは四位だろう。手伝ってくれないだろうか?



参加キャラクター

クロハ・クローバー



4-1

 ここは、一人前の召喚師を目指すための学校、スムーン学園の職員室。
 授業終わり、ここの生徒であるイージが、担任のテアーチ先生に宿題を提出していました。
「忘れないように、帰ったらすぐやりなさいと何度も言っているだろう」
「ごめんなさい……」
 宿題は今朝提出でしたが、イージは、やるのを忘れていました。結果、授業が終わった今、提出することになったのです。何度も注意されているのですが、なかなか改善できません。
 テアーチ先生からいつものお説教を受け、職員室から出たイージは、実力テスト担当で幻影魔導師のテソット先生とばったり出くわしました。
「あら、イージ。イージも来るの?」
「何かやるんですか?」
「あなたのクラスの何人かが自主的に、マジカルホールで補習したいって」
「僕、これから帰って宿題が……」
 “補習”と聞き、テソット先生の言葉を遮って逃げ腰になるイージ。テソット先生はくすくすと笑い、話を続けました。
「ただの遊びよ。まだ宿題やってないのはイージだけじゃないんだから、イージも来なさい」
 正直、イージは嫌だったのですが、テソット先生に連れられ、マジカルホールに行くことになりました。
「あ、テソット先生」
「ふうん、イージも一緒なのかよ」
 マジカルホールにいたのは、イージのクラスメートのレアデーとコオリとチェーキュの三人。イージは、これから何が始まるのか、気が気でありませんでした。
「では、ベヨンゼドオルを始めましょうか」
 テソット先生は、幻影魔法を発動しました。
 まばゆい光に包まれ、再び目を開くと、そこは見知らぬ、雪の降る町でした。前方には、四つの扉がある大きな家があり、後方や左右は、高いフェンスに覆われています。

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 レアデーとコオリとチェーキュはいますが、テソット先生はいません。しかし、どこからかテソット先生の声が聞こえてきました。
「ベヨンゼドオルは、指示型娯楽迷路よ。あなたたちは、必ず前方にある扉を選んで進み、後ろや左右、上や下を通ってはならない。扉の向こうには必ず部屋があり、次の扉を選ぶ。そうして、一番最初にゴールに辿り着いた人が勝ちよ。召喚魔法は使ってもいいけど、特別力が必要なものにはしていないから、自信があるなら召喚に頼らず進みなさい」
「じゃあ、俺は魔法使わないぜ」
「あたしもやめとく!」
「オイラも!」
「僕は使おう……」
 イージは、召喚魔法を唱えました。
 出てきたのは、クロハ・クローバー。
「あっ、クロハ! キミが来てくれると心強いよ!」
 クロハは、よくイージに協力してくれます。イージにとっては、非常に頼りになる存在でした。
「クロハっていうんだ。よろしくね! あたしは、レアデー」
「オイラは、チェーキュっていうんだよ」
「コオリ……」
 三人は、クロハに挨拶をしますが、やがてコオリが気づいたように声を上げました。
「あ……、そいつ、クロハっていうんだったか」
「うん、そうだよ」
「お前、クロハをちゃんとよく見とけよ。この前の野外実習の時もちょろちょろさせてただろ。召喚主としての自覚が足りないぞ」
 コオリが、イージをお説教します。イージは、先ほどもテアーチ先生からお説教されていたので、さらにへこみました。
「まあまあ、今はベヨンゼドオルを楽しみましょうよ」
 見かねたレアデーが、二人の間に入ります。
 そして、いよいよベヨンゼドオルが始まります。
「では、最初の扉を選び、進みなさい。同じ扉を選んでもいいからね」
「せっかくだし、違う扉を選ばないか?」
「そうね。じゃあ、あたしはピンクの扉」
「オイラは、青にするー」
「じゃあ俺は緑だ」
 左から、青の扉にチェーキュ、緑の扉にコオリ、飛ばしてピンクの扉にレアデーが向かいます。
「僕らはどうしようか、クロハ」
 残っているのは、右から二番目のオレンジの扉です。



4-2

 クロハは、一番右のピンクの扉に向かいました。イージもついていきますが、ピンクの扉は、すでにレアデーが選んでいるので、少し申し訳なさそうです。
「レアデー、僕らもピンクの扉に入っていいかな?」
「もちろん。決まりはないし……」
「ふん、レアデーの邪魔をするつもりか」
「もう、コオリ、イージをからかうのもいい加減にしなさいよ!」
「お先に~」
 話を聞いていると長くなると思ったのでしょうか。チェーキュはさっさと青色の扉を開け、中に入っていってしまいました。それを見て、コオリも素早く緑色の扉を開けて中に入ります。
「行きましょう!」
 レアデーもピンクの扉を開けて、中へと入ります。イージとクロハも、あとに続きました。
 扉の先は、こじんまりとした小さな部屋でした。前方に扉があり、その隣には、暖炉があります。暖炉の前には、揺り椅子に寝ている老人がいました。
 イージたちが部屋に入ると、その扉は勝手に閉まり、消えてしまいました。もう後戻りはできないようです。
 レアデーは、臆せず前方の扉に向かい、ドアノブに手をかけます。
「この部屋で何かをしなくちゃ、ドアは開かないようね」
 部屋の中心にはテーブルがあり、これ見よがしに丸い形の白いものがお皿に乗っています。その周辺には、小さな木の実やお菓子が並べてあります。
「おじいさんに聞いてみよう」
 イージがおじいさんのもとに行こうとしますが、レアデーはそれを止めました。
「おじいさんは、きっと起きないわ。これ……、キャケね。クリームを表面に塗っただけで終わってる。これを飾りつければ、扉が開くんじゃないかしら」
 キャケとは、粉やミルクなどを使ったお菓子の一種です。一般的には、型に入れて焼き上げてから、クリームや木の実、小さなお菓子などでデコレーションされたものを指します。

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4-3

 クロハは、テーブルに並べてあった木の実を手に取ると、キャケに乗せました。
「クロハ、手伝ってくれるのね。ありがとう」
 レアデーは、クロハにお礼を言い、自分もお菓子をキャケに乗せます。ぼーっと見ていたイージも、キャケの飾りつけを手伝います。
 イージは、プレート型のお菓子をキャケの隅に乗せました。すかさず、レアデーがだめ出しします。
「もう。それは、普通真ん中に置くのよ。隅に置いたらバランスが悪いでしょう」
 イージは、お菓子を中心に乗せ直し、ピンクの木の実を、ピンクのお菓子の上に置きました。
「イージ、色のバランスや、並べられるお菓子と木の実もよく見て。とにかく乗せるだけじゃだめ」
「似た色は似た色で寄せた方が……」
「イージは、センスの勉強もした方がよさそうね……」
 クロハが、紫色の木の実を手に取り、レアデーに見せます。レアデーは、その木の実はどこに置くべきか、クロハに指で示します。また、レアデーは、クロハだけでなく、イージにも色々と教えます。
「うん、なかなかいいできじゃないかしら」
 やがて、真っ白だったキャケは、豪華に飾りつけられました。
 すると、カチャリと鍵の開く音が聞こえました。レアデーの言う通り、キャケを飾りつけることで、先に進めるようです。
「じゃ、先に進む?」
 そう聞いているレアデーは、すでにドアノブに手をかけています。

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 クロハは、レアデーの後に続きます。イージは、おじいさんが気になるようでしたが、クロハに続いて扉を進むことにしました。
 扉の向こうは、先ほどのキャケの部屋や、最初に扉を選んだ時とはうってかわり、青空の広がる草原でした。ただし、左右には高いフェンスがそびえています。また、振り向けば、そこもフェンスになっており、通ってきた扉はもうありません。
 前方には家があり、扉が一つ見えました。しかし、その扉の前には、座り込んでうなだれている人がいます。
 イージは、その人のもとへ行こうとしますが、レアデーが止めます。
「見て」
 レアデーが指さした上には、紙きれのようなものが飛んでいました。よく見れば、目の形をしており、描かれているのも目です。
 その紙きれのような目は、ぽたりぽたりと雫を落としています。
「ああ、ちょうどいいところに。実は、魔法に失敗してしまって、私の顔のパーツが逃げてしまったのです。どうか私の顔のパーツを捕まえて、私の顔に戻してください」
 扉の前の人が顔を上げましたが、顔には、目も鼻も口も、何もありません。また、声が変なところから聞こえます。上を見れば、目と同じように、口も自由に飛んでいました。
「さて、どうしたものかしら……」
 レアデーが、そばに来た眉毛を捕まえようとしますが、素早く手をすり抜けていきました。そう簡単に捕まってはくれないようです。
「この状況、イージはどう考える?」
「お願い、顔に戻ってあげてよ」
「交渉は無理だと思うわ……」
 レアデーは、その場を動かず、思案しています。イージは、飛び回る顔のパーツに対し、ぺこぺこと頭を下げますが、特に意味がなさそうです。

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4-5

 クロハは、扉の前の人に近寄り、その人に向かって、特技を発動させました。
 クロハの特技は、変幻自在 《ファンタズム》。ものの見た目のみを変化させます。
「わあっ」
 イージとレアデーは、思わず息を呑みました。扉の前の人の顔は、クロハによって、美しい少女の顔に変化していたのです。もちろん、目も鼻も口もあります。
「どうかなさいましたか?」
 しかし、当の本人は、気づいていないようです。イージもクロハのもとに駆け寄り、説明します。
「クロハが、新しい顔をあなたにくれたんだよ! とってもかわいい顔だよ!」
「そうなのですか? しかし、私の目たちは、未だに飛んでいるようで……」
「やっぱり、その人の本当の顔のパーツじゃないと、だめみたいね……」
 レアデーが、飛び回る顔のパーツを見て、ため息をつきます。美少女の口は動きますが、声自体は、飛び回る口から発せられています。
「ああ、でも、今の私、どんな顔をしているのでしょう……。見てみたい!」
 その人が、力強く言いました。
 すると、目の動きが、ぴたりと止まりました。美少女となったその人の方を向いて、二つの目が停止しています。
「イージ! 目を捕まえて!」
「えっ、あっ、はい!」
 レアデーはすぐさま目を捕まえ、イージに指示を出しました。イージも、なんとか目を捕まえます。
 イージとレアデーが目を捕まえると、目は、途端におとなしくなり、本当の紙のように動かなくなりました。
「ああ、ちらっとしか見えませんでしたが、とても素敵な顔でした……」
 その人は、うっとりした美少女の顔をしています。しかし、これで問題が解決したわけではありません。レアデーは、飛び回るパーツをにらみました。
「何かで引けば、動きが止まるのかしら……」
 残り、飛び回っているのは、鼻と口、そして眉です。

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4-6

 クロハは、目を持っているイージの手にさわりました。
「目をつけてあげるのかい?」
 イージは、クロハに目を渡しました。
 すると、クロハは、その辺に生えている草に、受け取った目を押し当てました。イージが慌てます。
「あっ、あっ。そんなことしたら、痛いんじゃない!?」
「あら、イージだって、捕まえた時にぎゅっと握ったでしょう。あたしも、ね……」
「あ、えっと……、ごめんなさい!」
 イージは、まだ美少女顔であるその人に謝りました。その人は、言います。
「おそらく、あなた方が目を捕まえてくれた時から、何も見えないんです。それに、目からは、何も感じなくなってしまいました」
「それなら、目だけでも、まず戻してあげましょうか」
 しかし、その人にはすでにクロハの特技によって顔があります。レアデーは少し考え、イージに尋ねました。
「ねえ、クロハの特技の効果は、どれくらい続くの? それとも、解除を行うまで続く?」
「うーん、どうなんだろう……。僕が見たのは、クロハが自分自身に特技を使ったところだけだから……」
「じゃあ……、もう少し待ってみて、効果が切れたら、まずは目をこの人に返してあげない? 目だけでも見えるようになったら、少なくともこの人は、立ち上がって歩いたり走ったりできると思うの」
 レアデーは、ジェスチャーも交えて、未だに草に目を押し当てているクロハに言いました。
 なお、飛んでいる鼻、口、眉に、変化はないようです。先ほどと変わらず、自由に飛び回っています。

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「あ」
 その人の顔を見ていたイージが、声を上げました。レアデーやクロハもそちらを見ると、美少女の顔をしていたその人の顔は、この部屋に来た時と同じ、まっさらな状態に戻っていました。
 すると、クロハが真っ先にその人のもとに向かい、持っていた目を、顔の中心より少し上、向かって左に当てました。レアデーも、その隣に、自分が持っていた目を当てます。
「目はどうだい?」
「見えません……」
 その反応に、イージとレアデーは落胆しましたが、セリフはまだ続きます。
「位置が違う気が……」
「どの辺り?」
 その人は、自分の顔に手を当てて、示します。レアデーが両手を使い、クロハのくっつけた方の目も調整します。
「あ、そこです! でも、何も見えませんね……」
「じゃあ、もしかして……」
 レアデーは、右と左の目を入れ替えて、顔に押し当てました。すると、目は顔に貼りつき、周囲がその人の肌の色で埋まっていきます。やがて、まばたきを一回して、その人は立ち上がりました。
「ありがとうございます! 目が見えるようになりました!」
 相変わらず、声はまだ、自由に飛び回っている口から聞こえてきます。しかし、その人は、もう歩けるし、捕まえていない自分の顔のパーツも見えるようです。座り込んでいた、扉の前を離れました。
「よかったね。残りも頑張って捕まえよう!」
 捕まえる仲間が増え、イージはやる気満々ですが、レアデーは複雑な表情で扉に向かい、ドアノブに手をかけました。
「……開くわ」
 レアデーは、小さく呟き、イージとその人を眺めています。

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4-8

「あ、クロハ!」
 クロハは、扉を開けて、先に進みました。レアデーが慌ててイージの背中に呼びかけます。
「イージ、行くわよ!」
「えっ、でも、まだこの人の顔……」
「どうせこれはテソット先生の幻影よ! その人は、実在しない幻。だから、早く!」
 イージは、ようやく目だけ戻ったその人を見つめます。その人の目は、少し下がり、困っていることを無言で語っていました。
「やっぱり、僕、放っておけないよ!」
「クロハが先に行っちゃったのよ!」
「クロハが?」
 自分が召喚したクロハが進んでしまったことを知ると、さすがにイージは迷いました。しかし、なかなか足が動きません。
 見かねて、レアデーがイージの腕を引っ張ります。
「待って! かわいそうだよ!」
「じゃあ、あたしが残るから! イージは、召喚主の責任持ちなさい!」
 レアデーは扉を開けると、イージを突き飛ばし、扉を閉めました。イージが振り向いた時には、そこはもうただの壁で、レアデーの姿も見えませんでした。
「よう、本当にレアデーの足を引っ張ったんだな」
 見れば、クロハの他に、コオリがいました。周辺は、最初に扉を選んだ時と似た景色が広がっています。
「おめでとう、コオリ、イージ、そしてクロハ。あなたたちがトップよ」
 どこからか、テソット先生の声が聞こえてきました。
「でも、一位を決めないとね。コオリか、イージとクロハか」
 すると、前方に扉が一つと、鍵が二つ現れました。
「二つの鍵のうち一つを選び、扉を開けなさい。どちらかの鍵が扉の鍵で、もう一つははずれよ」
 コオリは早速、自分に近かった鍵を手に取りました。しかし、イージたちの方を振り向いて、尋ねます。
「落ちこぼれイージが、レアデーを利用しながらでも、俺と同じトップの結果を出したんだ。お前らが選べよ。こっちの鍵がいいっていうなら、交換してやる」
「う、う~ん……」
 コオリが持っている鍵も、まだ浮かんでいる鍵も、見た目はそっくりです。

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4-9

 クロハは、浮かんでいる鍵に近寄ると、特技、変幻自在 《ファンタズム》を発動しました。その様子を見て、イージは口を開きます。
「もしかして、その鍵を必ず扉に合うように変化させたのかい?」
「じゃあ、交換する気はないってことだな。どちらにせよ、俺がはずれなら、そっちが当たりだ。俺から確かめるぜ」
 コオリは、つかつかと扉に進み、鍵を鍵穴に差し入れました。
 すると、鍵は、自分でくるりと回りました。扉が自動的に開き、その向こうからまばゆい光が漏れて、辺り全てを照らします。
 気がついた時、そこは、マジカルホールでした。目の前には、テソット先生がいます。
「おめでとう。一位は、コオリよ」
「よしっ」
 どうやら、コオリの選んだ鍵が当たりだったようです。イージは、コオリと鍵を交換しなかったのを、少し後悔しました。
「そして、イージとクロハ。あなたたちが二位ね」
「僕が二位……」
 しかし、何か競争をする時は、毎回最下位のイージ。今回は二位で、しかも僅差で一位になれたわけです。イージにとっては、素晴らしい成績でした。コオリもイージを見て、微笑みます。
「よくクロハとレアデーにお礼を言っておくんだな」
「うん。クロハ、ありがとう! レアデーは……」
「もう顔は戻せたみたいよ。ありがとうね、イージ、あの人の心配をしてくれて」
 いくら幻想であっても、イージは、あの顔がない人のことが心配だったようです。テソット先生から状況を聞けて、イージはほっとしました。
「チェーキュは大苦戦しているから、逆転は難しそうね。レアデーが三位になりそうよ」
 今回は二位でしたが、イージは、残念とは思いませんでした。しかし、二位なのはレアデーと一緒に進んだおかげでもあるため、手放しで喜びもできませんでした。
「ありがとう、クロハ」
 今はただ、最初から最後まで共に歩んでくれたクロハにお礼を言い、レアデーとチェーキュの帰りを待ちました。

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END



結果

イージは、クロハの活躍のおかげで、4位中2位でした。

  • 最終更新:2018-01-19 09:12:53

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